■Novel(ファンタジー)

□選んだモノは *
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 突如、ルルネア礼拝堂地下に現れた暗黒龍来訪から3日。今回の出来事は人間と龍族との力の差を見せ付けられる形となった。その事により、幾分目を覚ました冥師たちは地方へと散っていった。今までルルネア礼拝堂地下に篭りっきりだった分、働いてくれないと困ると言うものだ。
 僕もまた、地方の治安維持のために山間の村へとやって来ていた。帝国中心部から離れ、田舎になればなるほど魔獣との遭遇の頻度が増した。その全てが村のはずれに出没しており、村への被害はないものの危険はすぐそこまで迫っている事を村長に告げたのが昨日。
 森の中を探索中の今も、姿は見えないが後方から気配が追ってくる。魔獣か、はたまた単なる森に住まう獣か。時折、木の葉の擦れ合う音がする。明らかに意思を持って追尾してくる何かに注意を払いながら速度を変えずに歩く。下手に相手を刺激しない、それが鉄則。
 突然、頭上でバサリと音がして、木の枝から小鳥が飛び立った。それを見上げたその時、殺気を強く感じ、咄嗟に地面を蹴って茂みの中へと飛び込んだ。先ほどまで僕が歩いていた獣道には何本もの氷柱が突き立てられていた。氷柱がめり込んだ地面は凍りつき、白く変色していた。
「術・・・?」
 自分を追ってきていたのが、森に住まう獣や魔獣ではなかった事を悟る。僕を襲った何かは獣道を挟んだ向かいの茂みに身を潜めているようだった。相手が僕とやり合おうと言うなら、僕もそれなりの対応を要求される。
「!!?」
 ふっと、その気配が消えた。かと思えば、その数秒後にその気配が僕のすぐ背後に移動していた。これはかなりやばい状況ではないだろうか。すぐさま印を切って、背後にシールドを張った。術発動直後に衝撃があった。先ほど地面に付きたてられたものと同様の氷柱が、シールドに激突したのだ。僕は息を呑む。術を発動させるのが後ほんの少しでも遅れていたならば、僕の命はなかっただろう。
 このままではいけないと、今度はこちらから仕掛ける。印を連続して切り、相手の使う氷系とは逆に炎による反撃を試みた。移動する相手の気配を追うようにして爆発が繰り返された。時折向うからも術による応戦があったが、紙一重で何とか回避する。いや、回避していたつもりだった。
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