企画・記念小説置き場
□熱を分かち合う *
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「ノートはさ、俺がとっといてやるから早退しろよ」
「ん〜…」
モゾモゾと布団に潜り込む。僕の荷物を教室まで取りに行くと言う高木を呼び止め、ひとつ気になっていた事を尋ねた。
「ここまでどうやって僕を運んできたの?」
すると高木は何かを思い出したらしくしばし笑い、答えた。
「須藤だよ。アイツさ、お前の姿が見えないってその辺きょろきょろしてたかと思ったら、倉庫に飛び込むなりお前の名前叫んでさ。皆が何事かって集まった時にはお前抱えて保健室行くー、って叫んで体育館飛び出てくし。あん時の須藤の顔、必死も必死!大真面目!桐原にも見せてやりたかったぜ」
僕は無意識ににやけてしまっていた。だって嬉しいじゃないか。好きなヒトが、自分のために必死になって、心配してくれて。その時の流くんの姿を想像しただけで温かな気持ちになれる。
保健室を出て行った高木を見送ってからも僕は笑みを抑える事が出来なかった。
◇ ◇ ◇ ◇
目が覚めると部屋の中が暗かった。既に日が落ち、外は闇で支配される時間となっていた。寮の自室に戻り、すぐに眠りに落ちた僕には時間の経過がよく分からず、ベッド脇に置いていた目覚まし時計を見た。時刻は既に夜の8時。確かベッドに潜り込んだのが午後3時だったように記憶している。
「随分寝ちゃったなぁ〜…」
しかしゆっくりと睡眠をとった分、いくらか身体が楽になった気がする。ベッドの上で伸びをしていると、部屋のドアがゆっくりと開いた。そこから入ってきたのは僕のルームメイト。そして恋人でもある、彼。
「もう起きて平気か?」
「ん、大丈夫〜」
彼の手には水の入ったグラスがひとつ。僕が起きた事を物音で気が付いたらしく、気をきかせてくれたのだろう。そのグラスを受け取ると中身をグイっと飲み干す。よく冷えた水が火照った身体に染み渡る感覚は何とも気持ちがいい。
流くんの腕がすっと伸びてくる。触れたのは僕の額。彼の触れる体温がなんだか懐かしく思う。