企画・記念小説置き場

□熱を分かち合う *
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大雑把に畳まれていたマットの上に倒れこみ、ごろりと横になると少し楽だと分かった。床や壁がむき出しのコンクリートで出来ているためか倉庫内はひんやりとしている。布団の代わりに体操マットでも被れば少し暖かいだろうか。マットとマットの間に無理やり身体をねじ込む。硬いし重いし少し埃臭い。でもじっと座ってクラスメイトのバスケをする姿を眺めているよりも随分いい。目蓋を閉じれば眠くなってきた。

「…なっ、ちょッ!?幸也!!?」

 よく知った声が聞こえた。僕の意識はそのまま融けていった。


◇ ◇ ◇ ◇


 意識が浮上し、目を開ける。目の前に広がるのは真っ白な天井。マットよりも柔らかな布生地。あぁ、ここは保健室だと理解した。

「おっ、桐原。目ぇ覚めたか?」

 シャッとカーテンが取り払われると、そこにいたのはクラスメイトの高木。流くんの元ルームメイトで、現在僕の住んでいたマンションにて彼女と半同棲中らしい。まあ僕も高木のおかげで今流くんと同室なんだけどね。

「お前さ〜、なんて所で倒れてるわけ?」

 呆れたように言われ、僕は記憶を辿ってみる。

「違うって。倒れてたんじゃなくて、寝てたの」
「寝てたにしてもさ〜…授業中に突然姿くらましたかと思ったら用具倉庫の中でマットに挟まってぐったりしてたら誰だってビビんじゃんか」

 …確かにシュールかもしれない。
 上半身を寝かされていたベッドから起すとふらりとした。すぐに寝てろとベッドに戻される。どうやら本当に熱があるらしい。
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