Gift Story
□とんでもないもの
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本棚に手をつき、小娘を逃げられないようにする。
小娘は、相変わらず赤面したまま、私を見上げていた。
少し潤んだ瞳に、半開きの小さな唇。
私が手を腰に回した際に、少し着崩れた桜色の着物。
私の言動や行動で、"たかが小娘"だとは思えないほど、小娘は一瞬で"女"に変貌する。
その、なんとも言えない優越感に浸りながら、私はくっと喉で笑い、小娘に顔を近づける。
「ふん。小娘、お前もそのような顔をするのだな」
「そ、そのような顔って……」
私は一瞬、小娘の首筋に目をやる。
「あっ!」
その白くて細い、どこか艶かしい首筋に顔を埋め、喰らいついてやると、予想外の声が小娘の口から紡ぎ出された。
「……ほぅ。そんな声も出るようになったか」
「ち、ちがっ!!」
羞恥から、小娘はグッと私の胸辺りを押し返した。
だが、今の私には、それすらも誘惑としか思えない。
再び小娘の首筋に顔を埋め、今度は軽く吸い上げてやった。
「いっ……ゃッ……」
押し返すも、繰り返される私の行動に、小娘の身体の力が抜けていくのを感じた。
「もっと鳴くがいい」
「そん、なっ……っん……!」
小娘の言葉を遮るように、その小さな唇を自身のそれで塞ぐ。
「んっ……ふぁっ………とし、み……ち、さ……」
口吸いの合間に、なんとか私の名を呼ぶ小娘。
初めて聞いた名前に、体の芯が疼いた。
スッと目を開け、小娘の表情を窺う。
真紅に染まる頬、長い睫から微かに零れ落ちる涙。
私を押し返す手も、いつの間にか私の背中に回され、絶え間なく続く私の口吸いに、小娘はたどたどしくも必死についてくる。
先程まで"小娘"だったとは信じられない。
その意外な一面に、私自身も疼き、もう既に歯止めが利かなくなっていた。
「ここまでやるつもりではなかったが……」
離れがたい唇を離し、今にもまた唇が触れそうなくらいの距離で言葉を発する。
既に息が上がっている小娘は、熱に浮かされているような表情で私を見つめた。
「どうやら私は……とんでもないものに惚れ込んでしまったようだ」
ふっと笑い、小娘の頬に手を添える。
小娘は、もう驚くことなく、それが当たり前だというように、私の手に自らの手を重ねた。
「……も」
「?」
「私、も………とんでもなく、意地悪な人を………好き、に……なっちゃいました……」
反論するような、しかしどこか嬉しそうに言う小娘に、私は不敵な笑みを浮かばせた。
「言っておくが……」
小娘の腰に回した手が、着物の帯を解いていく。
「私は、少しばかり激しいぞ」
END
→あとがき