本
□ナルシス・ノワール
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マルシベールさんとお兄様の噂が、また流れ始めた。
お母様にその噂が伝わってしまったらしく、長期休暇で帰ってきているお兄様と毎日のように言い争いをしていた。
聞くのが嫌で、防音魔法をかけて、お気に入りの音楽を大音量で流す。
「レギュラス、あの噂はどういうことなの!」
「お母様は噂を鵜呑みにするのですか!僕とマルシベールの間にはそのような関係はありません!」
「じゃあなぜあんな噂が流れるのですか」
「そんなの僕が知りたいです。僕とマルシベールはただの友人です。」
「シリウスがああなって、ブラック家には貴方しかいないのですよ。ブラック家の名に泥を塗るような真似はしないようにと何度も何度も…!」
「わかっています。僕だってこの家の為に、成績も交友関係も良好に築き上げてきました。」
「えぇ、それはわかっています。ですが、あの噂は今後貴方の人生を左右する可能性があるんですよ。マルシベール君とは暫く距離を置きなさい。」
「…わかりました」
お母様にはああ言ったけれど、僕とマルシベールはただの友人ではなかった。
恋人というにはまだ脆い関係。
でも、愛し合っている。
誰があの噂を流したのか、なんとなく検討はつく。
証拠も確信もない以上行動にはうつせない。
数日後、学校に戻った。
直ぐにマルシベールの所へ向かい、必要の部屋へ駆け込んだ。
「マルシベール、家の方はどうでしたか?」
「レギュラスと距離を置くように言われたよ。」
「僕もです…」
「そろそろ、なのかな。」
「そうですね…準備を始めましょうか。」
「その方がいいだろう。」
僕たちは、家を出る計画を立てていた。
それは噂が流れるずっと前からだ。
計画を実行させるのはまだ後の予定だったが、噂が流れ両方の親にばれてしまったせいで、実行をさせるしかなくなってしまった。
「一応、相談以外はなるべく一緒にいない方がいいだろうね。」
「えぇ、そうですね。この部屋を出るのも時間をおいて順番に出た方がよさそうです。」
「じゃあ、先に行って。俺は後からでるよ。」
「はい。」
部屋に戻ってから、名無しさんの事を考えていた。
彼女は僕達が消えたら、どうなってしまうのだろうか。
シリウスと僕がいなくなってしまったブラック家で、彼女はとても大きなものを背負わなければならなくなる。
僕が背負ってきた、シリウスと自分の重荷を彼女にすべて押し付ける形でいなくなるのは、とても心苦しい。
でも、この計画を実行させることで、将来的に大きなものが変わっていくはずだ。
最初は一人でやるつもりだった。
マルシベールについ洩らしてしまい、彼も巻き込んでしまった。
でも、彼が僕のやりたいことに付き合ってくれたのは、少し意外だった。
マルシベールはヴォルデモートをかなり慕ってる気がしたから。
計画実行までもう少し、それまで、名無しさんのいい兄でいたい。
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