デュラララ
□雨
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雨が好き。
音とか、匂いが好き。
傘は嫌い。
雨が空から降ってくるのが見れないから。
雨に濡れるのも好きだから傘はささない。持ち歩かない。
今日は朝から曇り空。降水確率も80%。
お天気お姉さんも傘を持って行くように、と言っていた。
でも私は傘を持って行かなかった。
案の定雨は降った。土砂降りだ。
同僚が送ってくれると言ってくれたけど断って、歩いて帰った。
びしょ濡れの状態じゃバスにも乗れないから歩いた。
「ひどい格好だね」
随分楽しそうな声が聞こえた。
真っ黒の格好に黒い傘。
彼の周りだけ違う世界みたい。
ぼんやりそんなことを考えていた。
「相変わらず傘持ち歩かないんだね」
「悪い?」
「いや、悪くないよ。全然ね」
「そう」
通り過ぎようとしたら肩を掴まれた。
「何?」
伸びた前髪が顔に張り付く。
「入っていきなよ」
一瞬何を言われたかと思った。
「結構ですから」
「風邪ひくよ?」
「今更。もう大分濡れてるんで」
「それはそうだけどね」
すたすた歩いていく私を何故か追い掛けてくる。
「なんでついて来るんですか」
「ん〜。真心ちゃん手出して」
「は?」
「早く」
おとなしく右手をだすと、彼の傘を握らされる。
「ちょっと持ってて」
何なのかと思いながらも、彼が濡れないようにさす。
突然ギュウッと抱きしめられる。
私は何も言えずされるがままになっていると、体を離す。
「じゃあね」
そのまま人混みに入って行き、すぐに見えなくなる。
あの人は何がしたいんだろう?
傘、どうしよう。返さないと。
雨は冷たいのに、顔が熱い。
意味わかんない。
私は赤い顔を隠すように黒い傘に隠れて彼のことを考えた。
折原臨也のことを。
どうやって返そう…