VitaminX-Z
□天十郎
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「ねぇ、天ちゃん知らない?」
アホサイユは甘い匂いが充満していた。
八雲やアラタは女の子から大量のチョコを貰ったらしく、綺麗な箱が山積みになっていた。
「知らないピョン」
「俺も知らないね。ちーちゃんは?」
「俺も知らんな」
「はぁ、どこいんのよ…」
さっきから教室やら体育館やら捜し回ってるのに全然みつからない。千聖が知らないってことは、多分まだ学校にいるんだろうけど。
「さがしてくる」
「大変だね〜。名前ちゃんは」
「天ちゃんたら何処にいるんだろうね。マジマジドマジで大変だね」
とりあえず教室の近くを捜す。いろんな人に聞いて回るけど皆知らない。
「何処にいんのよ。アホ天」
「なぁにぶつぶつ言ってんの?」
「方丈」
相変わらず胡散臭い笑顔の方丈がひらひら手を振って近づいて来る。
「方丈、天知らない?」
「成っちょ?さあどうだったかな〜?」
方丈のこういう言い方は嫌いだ。正直面倒。
顔にでていたのか、何かを企んだように笑った。
「さっき見た気がするなぁ、そういえば」
「何処で?」
「んー、何処だったかな」
ほんとめんどくさい。
ため息をつくと、腕を引かれて、方丈の腕におさまる。
そしたら後ろでガタガタと音がした。
抱きしめられているので、顔だけ振り向くと明らかに怒っている天ちゃんがいた。
「てん、」
すごい速さで私と方丈を引き離し、痛いくらいに手を握られて引っ張られる。
ついて行くのに必死で、でも一度方丈を見ると、肩を震わせていてこれが狙いだったのかと思った。
「天、痛い」
「……」
「天」
「なんでい、さっきの」
不機嫌丸出しの天の声が、なんだか可笑しくて思わず笑ってしまった。
「方丈はからかってただけだよ」
「それでも嫌だ」
「ごめん。油断してた」
痛いくらい抱きしめられて、名前は俺様のでい。なんて言うから、ほんとかわいい。
「天ちゃん」
「んー」
「チョコ、いる?」
「……いる」