VitaminX-Z

□一輪
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あの男の周りにはいつも女の子たちがいる。

花の名前で呼ばれ、女の子たちはキャーキャー騒いでいる。



自分の名前じゃなく、花の名前で呼ばれる。
それはうれしいわけ?


私は絶対嫌だ。まぁ、私にはあの男となんの関係もないんだけど。











「ねぇ」


最近ホントについてない。
家の鍵は無くすし、仙道先生のイタズラに引っかかるし、天童先生に説教されるし、なにより


「なんだい?名前ちゃん」


嶺アラタに付きまとわれている。


「邪魔なんだけど」


私は今、教室で日誌を書いている。
しかしなぜか嶺が目の前に座り、私を見ている。

ここ2週間嶺は私の周りにいる。
初めは変な花の名前で呼ばれたが、全力で拒否すると名前で、ちゃんづけにされた。



「補習いきなさいよ」


「補習なんかより名前ちゃんといることの方が大切でしょ。イヤ、ホントマジで」


classZの先生は本当に大変だと思う。
こんな問題児があと3人もいるんだから。


「なんで、私にそんな関わってくるの?」


ずっと不思議だった。
はっきり言ってclassBの私との接点はない。
話したのだって、2週間前が初めてだった。

私は特に目立つような容姿も才能もない普通の生徒だ。


「知りたい?」


嶺は嬉しそうに目を細める。
思わずドキッとしてしまった。


「知りたい」


「そ・れ・は、俺が名前ちゃんが好きだから」


甘い声でささやく嶺につい、ため息が出た。


「もういいよ」


「ちょっ!それだけ!?」


ぱたん、と日誌を閉じて立ち上がろうとすると腕を掴まれた。


「はなしてよ」


「あのさぁ、名前ちゃんって自覚なし?」


「は?」


いつもの軽い感じじゃなくて、真剣な目で見つめられた。


「なんの、自覚」


呆れたように嶺はため息をつく。



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