Johnny's

□剛
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せっかくのバレンタインだから剛を喜ばせたかった。








目の前の物体に私は泣きそうだった。
チョコを作るはずだったのに、何を失敗したんだろうか。
ちゃんと分量も計ったし、レシピ通りしたつもりだった。
なのになんだろう。このチョコらしきものは。


「どうしよ…」


思ったより声が震えていて、目の奥が熱くなる。
もう、剛が帰ってきてしまう。作り直す時間も買いに行く時間もない。
あぁ、どうしてもっと余裕もって作らなかったんだろう。
どうして一回作ってみなかったんだろう。



「ただいま〜」


後悔ばかりしてる間に剛が帰ってきてしまった。
剛の柔らかい声に、視界が歪んでしまう。


「美羽?」
「つよぉ…」
「ちょッ!どうしたん!?」


しゃがみ込んでいた私に心配そうに覗き込む。
優しく頭を撫でてくれて、涙が溢れる。


「美羽、どうしたん?なんかあった?」
「ごめ、つよしぃ」


ぎゅうっと抱き着くと、大丈夫やで、って額にキスしてくれた。


「ごめんね」
「なにが?」
「…失敗したの。チョコ」


剛はキョトンとしてて、んふふと笑った。


「そんなことで泣いてたん」
「そんなことじゃないもん」
「べつに気にせんでええのに」
「だって剛、楽しみにしてたから。喜んでほしかったんだもん」


剛の腕の力が強くなって、尖らせていた私の唇にちゅっ、ってキスをした。


「美羽、俺めっちゃ嬉しい」
「ごめん」
「ええって。俺の為に頑張ってくれたんやろ?」
「…ん」
「ありがとう」



涙を舌で舐めて、しょっぱいキスをした








「…来年がんばる」
「期待しとくわぁ」




 

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