短編


□守るから・・・
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その声の主は奴良組二代目の奴良鯉伴であった

「に、にだいめっ!」

鯉伴はつららを抱き地上に降りる

「大丈夫か?つらら」

「は、はい!大丈夫です」

つららは瞳に浮かべていた涙を拭く

「あの・・・二代目?」

「どうした?」

「どうして、ここに・・・?」

「リクオが心配でな・・・黒に任せたがそれでも心配でな」

鯉伴は微笑むように話すがつららはやっぱり側近失格だと思いこむ


「もちろん、お前も心配だったんだぞ?つらら」


「・・・えっ・・・?」

つららはその言葉に目を大きく開く

「お前ドジだろ?だから建物の下敷きになってないかってね」

今度は笑いながら言う

「鯉伴様ったら!どこでその情報を!・・・ってドジじゃありませんっ!!」

つららの顔はいつのまにか晴れていた

「ウソだよ・・・でも本当お前が無事でよかった・・・!」

「鯉伴様・・・」

つららはその言葉に心を惹かれそうになる

「こんなことしてる場合じゃねえな、リクオも無事だったことだしさっさと帰るぞ!」

「は、はい!」

そして、鯉伴とつららはリクオと黒がいるところに戻る

「雪女!無事だったのか!」

「あったり前でしょう!?妖怪の私があんくらいで死ぬわけないじゃない!」

「ゆきおんなぁああ〜」

リクオはつららが死んだと思っていてつららの姿をみると抱きついてきた

「リクオ様?大丈夫でしたか?」

「僕なんかより雪女が生きててよかったよぉぉ・・・ひっく・・」

リクオの目からは滝のような涙があふれる

「心配かけて申し訳ございません。リクオ様」

「・・・ひっく・・許すけど・・・もぅ・・いなくなるなよ・・!・・ひっく」

「はい!もちろんです!私はリクオ様の側近なんですから!」






時は戻り現在―――


「あれから、10年・・・ですか・・・時が経つのは早いものです」

つららは縁側で月を見ていると

「あれから?」

そこにリクオがやって来た

「はい。そうです。夜のリクオ様は知らないことでしょうか・・・?」

「まぁ、10年前なんて俺は表の世界なんて知らなかったしな」

「そうなんですか・・・」

「んで、10年前何が起きたんだ?」

「地震ですよ・・・地震」

「地震か・・・・天災は免れぬことだから恐ろしいな」

「そうですね・・・あの時はとても恐ろしかったです。」



「もう、大丈夫だ」



(・・・・リクオ様・・・?)

リクオはそういうとつららを優しく抱きしめる

「恐ろしい地震があっても俺はお前を守る」

「り、リクオ様!?」

「今な、昼の俺が言ってるんだ・・・

 つららは僕が守る、いなくならないようにってな」

そう、昼のリクオは10年前の事を覚えていたのだ

目の前から突然消えたこと

つららが死んだかと思ったこと

「リクオ様・・・」

つららが見るリクオは鯉伴と重なって見えた

「リクオ様は私が守りますよ、側近なんですから」

「つらら・・・」

そして二人は見つめあい影が一つになったという

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