短編


□守るから・・・
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10年前――

「キャー!」

「助けてー!!」

相次ぐ悲鳴

その悲鳴の原因は、“地震”だった

当然奴良組でも

「火元を締めるんじゃー!」

「戸棚から離れろー!」

の声が散乱していた

しかし、その中で

「リクオ様はどこだ!?」

「リクオ様なら、雪女と一緒に・・・」

「そんなことじゃない!場所を言え!!場所を!!!」

父親である鯉伴が急いで叱る

その姿に怯えている小妖怪達もいた


「リクオ様は雪女と散歩中ですっ!」


鯉伴は急いで迎えに行こうとしたが今の総大将は自分だ

自分がここから離れてどうする

と思い、側近の雪女にリクオを託す

(頼んだぞ・・・!!雪女!!)


その託された雪女達というと

(揺れている・・・!?地震?)

その揺れはマグニチュード9だった

そして揺れは次第に激しくなっていく

「ねぇ、つらら。何だか地面が揺れているよ?」

「若は、必ずこのつららがお守りいたします!!」

「?」

当時のリクオにとってはその言葉の意味がわからなかった

(ここは、公園だけど周りに大きいビルが何軒も立っているわ・・・・離れたほうがよさそうね)

と賢明な判断をするがよく考えたらここは浮世絵町

少し離れたところに海岸・・・つまり海がある

津波が来てもおかしくない

しかも組の者も心配しているだろう

つららは一刻も組に戻ることを思った

しかし、そんなことは考えてられなかった

なぜなら、つららの予想通りビルが崩壊しつらら達がいる場所へ倒れてきたからである

「リクオ様危ないっっ!!」

つららはリクオを抱き上げ空へ舞う

周りにいた人間はビルの下敷きになる者や泣き叫ぶ者、その場から逃げる者などいろいろいた

「つらら、どうして家が崩れたの?」

リクオは知りたそうな目をしている

「リクオ様、これは地震というものなのです。人間や妖怪でもこれには叶いません」

つららはリクオに簡単に説明するが、リクオはもっと知りたそうにしてる

(とにかく高台へっ!!)

つららはリクオの身の安否を第一とした

そしてつららは、高いビルを見つけた

(とにかく、あそこに行けばっ!!)

つららは抱いていたリクオを降ろすと周りの状況確認をした

(ひどい有様ねぇ・・・・)

と、そこに黒田坊がやって来た

「リクオ様!ここにおられましたか!!」

「黒田坊!?」

つららは黒田坊が来たことに驚く

「どうして、あんたがいんのよ!奴良組は・・・!?」

「奴良組には二代目がいるから大丈夫だ。拙僧は二代目に頼まれて来たんだ」

「二代目から・・・?」

「そうだとも。リクオ様の身にあっては危険だからな」

「そ、そうね・・・」

つららは気を落とした

それは


自分は周りから守るほどの力もない


と思ったのだ

気を落としているつららに気づかず黒田坊は

「さ、リクオ様。本家に戻りましょう!雪女帰るぞ」

そう言った途端に


「きゃぁっ!」

つららの足元が崩れだした

それと同時に足元の地面が割れつららと共に落下していく

『雪女!』

二人は同時に叫ぶ

しかし、落下中のつららには聞こえていない

つららにとってこれは良かったのかもしれない

力がない者はいないのと同じ

側近をやる資格などないのだから

「このまま、死のうかしら・・・・?」

つららはふと言葉にする

他人からすればそれほどの事で、と思うけどつららにとってはとてもショックだったのだ

そしていつのまにか視界がボヤケテいる

「あぁ、涙が出ているのね・・・リクオ様の最後まで側近できなくて、ごめんなさい・・・・りはん・・さま・・・」


「誰が側近を辞めさせるって?」


つららはその声に視界がくっきりとなる

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