短編


□振り向いて
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「ねね!つらら!」

「な、何よ毛倡妓。」

つららが朝ごはんの支度をしているといきなり毛倡妓から腕を掴まれた

「来週どうすんの?」

「何がよ?」

毛倡妓はその言葉に深いため息をついた

「何がって、バレンタインデーでしょ!?」

「そうだったわね」

毛倡妓はつららからの返事に愕然とした

「何よ!その興味ないような返事!!」

「だって、バレンタインって好きな人にあげる物でしょ?私、別に――」

「いるでしょ!?好きな人!」

毛倡妓はつららの言葉を挟む

「な、何言ってんのよ!!私は――」

「じゃぁ、リクオ様は?」

つららは毛倡妓から突然出た主の名前に驚いた

「リクオ様!?///」

「声でかいとリクオ様に聞こえちゃうわよ?」

毛倡妓はつららの耳元でそっと囁く

「うっ!ってか何でリクオ様なのよ!!」

「何惚けてんのよ?アンタリクオ様のことが好きなのに?」

「そんなはずっ!!」

つららは赤面になる

「大丈夫よ。私がちゃんと手伝ってあげるから、ね?」

「・・・・・ゎ分かったわよ・・・」

つららは恥ずかしそうにチョコを作ることになった

つららはそれから一日中ずっと悩んでいた
それは学校でも同じことだった

「バレンタインかぁ・・・リクオ様が私のを貰ってくれるはずないのに・・・」

つららは一人屋上で佇む

「どうせリクオ様は、学校中から人気だし、どうせ私のなんか・・・」

つららは淡々と呟く

この頃リクオはつららより人間といる時のほうが笑顔で笑っていた

だから、自分のチョコを貰ってくれるか心配だった

しかしつららの感情は隠しているつもりか顔に出ていた

ポタッ――

「へ?」

そう、それは涙だった

「あれ、何してるんだろう私、別に・・・悲しいわけじゃ・・・・・ぁ・・・」

つららの心の中はグチャグチャになっていた

つららは思いっきり心の中で叫び続けた
それは、主の名前


りくおさまっ・・・・・!!!


つららは蹲っていた

その叫びは心じゃ耐え切れなかったようだ
小言だが出ていた

リクオはつららの異変には気づいていた

リクオはつららに声をかけても「そうですね」「はい」ぐらいですぐ会話が切れてしまう

帰り道リクオは

「つらら」

「何でしょうか?」

「僕が嫌い?」

「っ!!と、とんでもございませんっ!!」

「じゃあどうして僕を避けるの?」

「避けてませんっ!」

「避けてる」

つららはその場に立ってもいられなくなって立ち去った

リクオは

(やっぱり、きらい・・・か・・・)

そう思ったがつららの立ち去った後を見ると地面には小さな水晶がいくつもあった

(つらら・・・・・?)

リクオは一瞬何か分からなかった

しかし

(そうか、これは――)

そう


つららが零した涙か――

リクオはそのあとどれだけ自分を悔やんだだろう

追い詰めなかったらこんな結果にはならなかった・・・と


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