short story
□愛し
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「----藤崎君、ちょっと、そこを寄ってくれないかな」
近い近い近い。離れろ変態。こいつは絶対、変な性癖をもっていると思う。SMとか。
『意地悪なんて、好きの裏返しよぅ』
そう言っていた、クラスメイトのことをふいに思い出した。わー、ナイナイナイナイ。
私のことが好きで、こんな虐めモドキのことするならば、もうそれは、照れ隠しのレベルじゃない。Sだ。
「は?」
ほら、見てよ。この王様っぷり。あー近い。
「あの、少しよってくれませんか。通れないのですが----」
「猫かぶり」
そう、なじるように言われたことばに、思わず頬が引きつる。言っておくが、私は心の中で罵倒はするが、声に出したことはないはずだ。なのに、彼はいつも猫かぶりとなじる。
「----何のこと?」
まあ、しばっくれるが。