short story

□愛し
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そして代わりに出した言葉は、いいこちゃんぶった、かわいらしい声。

「藤崎君、どうしたの。こんな場面ばっかり、あなたと会うなんて、奇遇だね」

こっち来るな、変態野郎。そんな罵倒を裏に含ませて、私は振り返る。

そこにいたのは思ったとおりの人物で、同時にこの、虐めのようなことをする、張本人だった。とはいえ、彼は自分の手を汚さない。誰かに命令するのだ。本当に、気に入らない。

彼と初めて会ったときは、小5だった。それまで噂では知っていたのだが、マンモス校だったこともあり、面識が一切なかったのだ。クラスが同じにならなければ、今でも、話すことはなかったであろう。

はじめの自己紹介。私も人のことは言えないが、優等生ぶって微笑む彼を見て、その頃の私は思った。-----気に食わない。

彼のそうだったのか、会った一週間後には、今の虐めらしきことが行われていた。


「本当に、奇遇だな」

しれっとそんなコトを言う口を、針と糸で縫いつけてやりたい。せっかくなら、その上にボンドをぬってやる。

カツカツと歩み寄る音に、眉を寄せた。彼が、1メートルくらいまで寄ってくる。さりげなく後ろにさがると、もっと間をつめてきた。


そう----、特に私は何かしたわけではないのだ。ただ、向こうが一方的に嫌っているだけで。嫌われれば、私も、友好的になんて思えるはずがない。そんなの、Mだ。自然な流れで私は彼を、嫌って、憎んで、憎んで。
最終的には、厭うようになったのだ。
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