幻想の世界の古びた書庫
□今だけは目を瞑っていて
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何気なく触れた手はひんやりとしていた。
イヴェールはただ、メルヒェンの行動を青と赤のオッド・アイで見つめていた。
「どうしたの?メル君」
「………イヴェールの手、冷たい」
メルヒェンはそのままイヴェールの手を、自らの頬に添えた。
「君は永遠の零歳児だから体温が高そうだが………そうでもないからいつも驚く」
「だって僕は生まれる前に死んじゃった存在だもの。体温低いのは当たり前だよ」
からからと笑いながら、彼はメルヒェンの手をほどき、そのまま抱き締めた。
「メル君も冷たい」
「当たり前だ。私は死体だから」
触れ合った身体からは鼓動を感じない。
ただ【其処に在る】だけ。
【有る】から【無い】のか。
【亡い】から【在る】のか。
しかし、二人には必要の無い問いであった。