幻想の世界の古びた書庫
□水底の月
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気付いた時には私は水の底に、
彼女は陸の上にいた。
満月の夜には透明な天井から、彼女と彼の顔が見えた。
「見てエレフ!あとちょっとで取れそうよ!」
「あ、危ないよミーシャぁ!」
私は二人の笑顔を見るのが大好きで、
満月の夜が来るのを指折り数えながら待っていた。
彼等の輪に加わる事は叶わないけれど、
私は幸せだった。
二人の子供の純粋な心から生まれた私。
そんな【親】とも呼べる人達が寄り添い、笑っているだけで十分だった。
彼等の幸福は私の幸福。
私は彼等に感謝していた。
私を生み出してくれた彼等に。
しかし、
ある日を境に私は二人をぱったりと見なくなった。