チェスゲーム

□リデル
2ページ/4ページ



これを見てごらん、と魔女は杖をひとふりして、魔法の鏡を取り出した。

「過去を見せてあげるよ」

魔法の鏡を杖で軽く叩くと、鏡に波紋が広がり、やがて過去の光景が映し出された。

そこには、しょんぼりとしているリデルをしかりつける先輩使用人がいた。

「本当にお前は使えない子ね」

「ごめんなさい。私がいたらないばかりに」

フンッ、と先輩使用人は実に不愉快そうにリデルを見る。

「旦那様達のご昼食前に、庭の草むしりと、庭木の手入れ。家畜小屋の掃除と餌やり。馬にブラシをかけて、鶏の卵をとってくること。坊っちゃんの部屋と、リビングの掃除。洗濯物を洗って干して。昼食の下ごしらえをしておくようにあれほど言ったでしょう」

「はい。その通りです。どうしても草むしりをすることができなくて。皆さんに迷惑をかけてしまいました。本当にごめんなさい」


魔法の鏡から、過去の映像が消え失せ、魔女は怒ったように杖で鏡を叩いた。

「これを見て、何か思うことはないのかい」

「はい。迷惑をかけてしまったなと。次は頑張ります。お屋敷の仕事は他にもたくさんあるので」

「いや、そうじゃないよ。仕事こなしすぎてるんだよリデル。仕事ができすぎるから、どんどん押しつけられてるだけだって何で分からないんだい」

イライラする魔女を、リデルは不思議そうに見つめる。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ