チェスゲーム
□リデル
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これを見てごらん、と魔女は杖をひとふりして、魔法の鏡を取り出した。
「過去を見せてあげるよ」
魔法の鏡を杖で軽く叩くと、鏡に波紋が広がり、やがて過去の光景が映し出された。
そこには、しょんぼりとしているリデルをしかりつける先輩使用人がいた。
「本当にお前は使えない子ね」
「ごめんなさい。私がいたらないばかりに」
フンッ、と先輩使用人は実に不愉快そうにリデルを見る。
「旦那様達のご昼食前に、庭の草むしりと、庭木の手入れ。家畜小屋の掃除と餌やり。馬にブラシをかけて、鶏の卵をとってくること。坊っちゃんの部屋と、リビングの掃除。洗濯物を洗って干して。昼食の下ごしらえをしておくようにあれほど言ったでしょう」
「はい。その通りです。どうしても草むしりをすることができなくて。皆さんに迷惑をかけてしまいました。本当にごめんなさい」
魔法の鏡から、過去の映像が消え失せ、魔女は怒ったように杖で鏡を叩いた。
「これを見て、何か思うことはないのかい」
「はい。迷惑をかけてしまったなと。次は頑張ります。お屋敷の仕事は他にもたくさんあるので」
「いや、そうじゃないよ。仕事こなしすぎてるんだよリデル。仕事ができすぎるから、どんどん押しつけられてるだけだって何で分からないんだい」
イライラする魔女を、リデルは不思議そうに見つめる。