ソーマ・シックザールの子育て日記

□子育て日記二ページ目
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 数分、十数分と時間が過ぎていく。
 三十分くらい経った頃だろうか、突然フードのソーマはヘッドフォンに手をかければそれと被っていたフードを外す。途端にヘッドフォンを通してしゃかしゃかと音が流れ出した。

「…………おい、お前」
「……何?」

 今まで人形のように動かなかった癖に、話しかけた途端に顔を上げて返事をする子供ソーマに彼は自分の白い髪を掻き上げて少し気まずそうに口を開いたり閉じたりを繰り返す。

「お前、何かしたい事とかはねぇのか」

 ここまで静かだと逆に怖いんだよ、とフードのソーマは言ってテーブルにヘッドフォンを置く。
 彼に問われた子供ソーマは少し考えるような素振りを見せた。考えなければ何かすることもないのかと呆れたくなる。

「……特にないけど、ソーマは何かあるの?」
「聞き返すんじゃねぇ。俺はお前に訊いてんだよ、ソーマ……ああくそややこしい」

 ぐしゃぐしゃと髪を掻き乱す彼に何か悪いことをしてしまっただろうかと子供ソーマは不安になる。
 だがそれを訊くよりも先に、フードのソーマが立ち上がった。

「本が読みたいなら貸してやるし何か音楽でも聞きたいなら別にそれで良い。……ああ、映像作品が見てぇならコウタの所に行けよ」
「……じゃあ本が良い」

 思案した結果読書を選んだ“子供”にフードのソーマは手近にあった本を手に取れば彼に放る。ハードカバーで分厚い本だったから彼が読めるかどうかは分からないが、読書がいいと言ったのだからいいだろう。
 予想通りというか予想外というか。その本を膝の上に置いて子供ソーマはぱらぱらとページを捲り始める。
 こんな餓鬼は見たことがないな、とフードのソーマは半ば呆れながらもまたソファに腰掛けて今まで放置していたヘッドフォンを手に取った。
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