ソーマ・シックザールの子育て日記
□子育て日記一ページ目
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場所はペイラー・榊の研究室。以前ここにアラガミの少女――シオを招き入れたときのように、ほぼ全員がこの場に揃っていた。前述したシオの時と違うのは、ここにリンドウも同席している事か。
だがその時のように皆が皆「ええええええ」なんて悲鳴を上げているわけでもない。
代わりに恐ろしいほどの静寂がこの空間を包み込んでいた。
「…………博士、これって……どういうことなんすか?」
「そ、そうですよ。突然呼び出されたから何かと思ったら……こんな事って……」
「ちゃんと、説明……して下さりますよね……?」
全員が三点リーダーしか発さない――実際には全く話していないのと同意義だが――静寂を破ったのはコウタで、彼は引きつった笑いを浮かべながら自分達が凝視している正体を指差す。
コウタがこの沈黙を破ってくれたお陰か、続いてアリサやサクヤもまたしどろもどろになりながらも榊に問うた。
リンドウはただ感心したように「おー」なんて声を上げているだけだし、ソーマは今まで通りに壁に凭れて事の成り行きを見守っているだけ。
そんな状況の中、普段と変わらぬ笑顔を浮かべて榊は頷いた。
「勿論。……簡単な事さ」
そう前置きをして榊は傍のテーブルに置いてあった缶を手に取る。