Novel1
□I must tell you.
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「……だからこそ、貴方に伝えるべきことがあります」
医療班に新しく配属された黒髪の少年――レンが俺にそう言ってきた。
最初はリンドウさんを馬鹿呼ばわりしたり俺を誉めたりしていた。なのに、いきなり話が変わった。だから少し戸惑った。
「……なにを」
俺はなるべく平常を装い、そう訊ねてみた。予想なんてしたくない。今なら、絶対予想が当たってしまう。それだけは自信がある。
「“アラガミ化した神機使いの処理方法”です」
ほら、当たった。
「………」
俺は口をつぐんだ。聞きたくなんかない。そう考えているとレンは偏食因子がどうのとか話し始めた。要するにどうしたらアラガミ化するかとかそんなカンジのことだろう。俺は頭悪いからそう言われても分からない。
「アラガミ化が進行した結果、二度と人間には戻れません」
「……!!」
二度と……人間には戻れない……!? ただ一つその言葉だけ、意味を理解することできた。できてしまった。だけどその事実なのかなんなのか分からないことを告げられても俺にはどう反応していいか分からない。俺は呆然とした。
「……そんな、アラガミ化した神機使いの処理方法として、最も効果が高いのは……適合した者にしか扱えないという矛盾を孕むため決定的な対策とは言えませんが……」
止めてくれ……それ以上言わないでくれ……
俺はレンから告げられる言葉を聞きたくなくて、小さくかぶりを振った。
「アラガミ化した本人の神機を用いて、」
止めろ……!!
「殺すことです」
その単語を聞いた瞬間、俺はガンッ!! とレンの細い身体を自動販売機に押しつけた。カラン……と初恋ジュースの缶が床に落ちる。怒りに任せて出た行動にも、レンは狼狽えることもせず、淡々と続けた。
「リンドウさんの足跡を辿って、運良く彼に出会ったとしましょう。……もし……その時、彼がアラガミになっていたらどうします?」
「……俺は……」
リンドウさんがアラガミになっていたら……俺は一体どうするんだ……?
「貴方は、その“アラガミ”を殺せますか?」
「!」
リンドウさんだったアラガミを……殺す……?
驚いたのかなんなのか分からない衝動に駆られた俺は、知らず知らずのうちにレンの肩から手を離していた。レンはその場に立ち尽くした俺から離れて床に落ちた缶を拾い上げた。