ソーマ・シックザールの子育て日記

□子育て日記二ページ目
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 それから数時間後、フードのソーマは流石に音楽を聴き続けることにも飽きたのかコンポを操作すれば音楽を止める。今まで延々と鼓膜に音を入れていたからか軽く耳鳴りがして、それに対して彼は顔を顰めた。
 ちらり、とソファに視線を向ければ数時間前から変わらずに黙々と本を読む子供ソーマの姿。喉も渇いていないのか、それとも気付かないほどに読書に没頭しているのか。
 つくづく子供らしくない行動ばかり取る――いや、実際子供ではないのだが。
 彼から視線を外してフードのソーマは部屋の時計を見る。地下にある所為で今地上がどうなっているのか、夕方なのかどうかすら理解できないが、時計は午後の七時に近い時間を指し示していた。
 そろそろ夕飯の時間か、と彼は子供ソーマに向き直る。
 子供ソーマもまたフードを被ったソーマが動いたことでそれを理解していたのか本を閉じればそれを手に抱いてソファを降りた。

「……行くぞ」

 今まで外していたフードを被り直したソーマに続くようにして、頷いた子供ソーマも部屋から出た。
 できるだけ人目を避けてソーマは子供ソーマを連れて廊下を歩いた。ただでさえ目立つ自分と目立つ子供だ、誰かの目に付けばどうなるかなんて想像したくない。
 心なしか早足で歩くソーマを走るようにして彼は自分を導く背中を見る。
 調子よく歩を進め、この調子なら誰にも見つかることなく廊下を抜けられるかと人知れず安堵に胸をなで下ろしていれば突然聞こえてきた重い音。何か重量のあるものが落ちるような音にソーマは「一体何事だ」と肩越しに振り返った。
 と、ほぼ同時に溜め息を吐く。

「……何してんだ、馬鹿」

 足がもつれたのかその場に転んでしまった子供ソーマは特に泣いたりする事もなく身体を起こす。
 きょろきょろと辺りを見回して、自分の腕から落ちてしまった本を探している彼にソーマは苦笑のような嘲笑のような曖昧な笑みを零して自分の足下にある本を拾い上げた。
 軽く表紙を手で払い、未だに廊下に座り込む子供ソーマを立ち上がらせて彼の手に渡した。
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