Novel1

□MIA
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「行くぞ!」

 贖罪の街。たった一人でそこへ来たレンは勢い良く出発地点から飛び降りた。そして今回の討伐目標である“鎧を纏った猫”のようなアラガミ――ヴァジュラへ向かって一直線に走りだした。
 ヴァジュラも走ってくるレンを見つけ、地が震えるような咆哮を上げる。
 ヴァジュラへ向けて愛刀・獣剣を振り上げ、高く飛び上がる。狙いは勿論ヴァジュラの頭だ。近づく獲物に思わず口角が上がる。ヴァジュラは跳躍する為に身を低くし始めていた。

――跳ぶ前に一撃……!!

 焦ることもせずに落ち着いた思考でそう考えた。タイミングを間違えれば危ない攻撃だが、レンは今落ち着いている。タイミングを間違う等はしないだろう。

「今だ!!」

 自分の合図と同時に獣剣を振り下ろす。ガツンと鈍い音が辺りに響く。レンの剣は見事にヴァジュラの頭に叩きつけられていた。
 そのままヒラリと身を反転させてヴァジュラの背後に着地する。ヴァジュラは雄叫びをあげながらその場に倒れた。

「馬鹿かお前」
「!!」

 素材を回収する為と捕食する為に捕喰形態へと武器を変形させて、倒れたヴァジュラへ向けて貫いた後、背後から聞き慣れた声が聞こえた。

「ソーマ」

イーブルワンを肩に担いだソーマが、眉間にシワを寄せたままこちらへ歩いてくる。

「一人でミッション受けるな。一人じゃなくても出来ただろ。なんで呼ばなかった」

 黒い靄と共に地へ吸い込まれていくヴァジュラを見ながら、珍しく饒舌にそう訊ねた。

「気分」

ソーマの問いに短く答えた後、ソーマへ向かって走りだした。

「!?」

 ソーマはレンの行動に驚き、目を見開いて立ち止まった。

「伏せろ!!」

レンがそう叫んで跳躍する。だがソーマは突然のことで動けない。

「ソーマぁ!!!!」

怒鳴りながらバックラーを展開させてソーマの背後に降り立つ。レンの怒鳴り声に一瞬だけ肩を竦めたソーマだったが、すぐにレンの指示通りに身を屈めた。

「っ!!」

 ガキィンと鈍い音が辺りに響き、レンがたたらを踏んだ。彼の足元にいたソーマは驚いたようにレンを見上げる。
 レンは歯を食い縛り、バックラーを押している。その向こうには最近ではよく見るようになった紫の光を帯びた剣。ソーマは目を見開いた。

「ハンニバルだと……!?」
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