おおかみかくし

□罪
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草木も眠る丑三つ時。
風によって揺れる木の影が襖越しに歪んだ形を作り出す。

眠梨は抱きしめた自身の身体が、震えていることに気がついた。
じとり、と背中に嫌な汗が流れる。
荒れたままの息を整えながら、眠梨は自分が見た夢を思い出していた。


その夢は、眠梨がまだ眠に狩人の役目を任せることにはなっていなかった頃───。
眠梨が初めて行った、カミオトシのことだった。

震えがとまらない身体。
息はぜいぜいと激しく音を立て荒れている。
周りにはやけに冷静な狼面衆。
内臓がぐちゃぐちゃにぶちまけられた人。
引き裂かれて、原型を留めていない人。
赤と黒のなかで、綺麗に光る指輪───。

怖かった。
自分が人間ではなくなってしまった気がした。
周りからは冷静な声が聞こえるて、自分を落ち着かせようと声をかけていることはわかったけれど不気味としか思えなくて。
おびえる眠梨に、暗闇の中から化物だと声が聞こえて、無数の手が伸びてきて。

眠梨の身体はぶちり、と嫌な音を立てて無数の手に引き裂かれた───そんな夢だった。



「私だけではなく・・・眠にもこんな思いを・・・・・・・」

その事実を思い知らされる度に、激しい後悔と罪悪感が眠梨を襲う。
何故自分はこうなのだろう。何故体が弱いのだろう。何故、“出来損ない”なのだろう・・・・。

自分が役目をきちんと受け継ぐことが出来る身であったなら。
眠は今でも笑ってくれただろうか。


昔みたいに、「眠梨」と呼んでくれただろうか────・・・・・・。
 

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