短編

□宝石箱から飛び出した夢
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うわぁと熱いお客さん達の声に、はっとする
ステージの上のみぃ(美希)を見入ってしまっていたんだ
みぃの「マリオネットの心」終わりに近づいていた

「すごいわね。美希」

「わっ!びっくりした、千早か」

いつの間にか隣に千早が立っていた
思わずびくぅっと肩がはねるように動く。それを見た千早は
「ごめんなさい」と目を細めて、クスクスと笑いながら言った

「いいよ、別に」と返事をしつつ、千早が見ているほうを私も
見てみる。千早が見ているのはステージの上のみぃ達。「綺麗だね」と呟くと「そうね」と返してくれた

ステージの上のみぃ達は、本当に綺麗で、まるで箱にずっと
閉じ込められていて、初めて身に着けられた時の宝石の
ような美しさだった。例えが少しややこしい気もするけど
宝石というのは、身に着けられて初めてその美しさが本物に
なるのだと思う。ショーウィンドウや箱に閉じ込められた
ままじゃ、駄目なんだ。手にとってあげなくちゃ



「私の番ね」

千早の出番はみぃ達の次。みぃ達のステージは丁度
今終わったところで、みぃ達はお客さん達の声に包まれている
一歩前に出ようとする千早の衣装を、私は咄嗟に掴んだ

「何?」と千早が不思議そうな顔をして振り向いた。目が合う

「ち、ち、ち、千早っ」

「ちゃんと聞いてるから。落ち着いて」

思わず噛みまくってしまう。・・・うう、恥ずかしい
そんな私に、千早は優しく微笑んで、待っていてくれる
これじゃどっちが年上だかわからない。まあ、大差ないのだけれど

「か、輝いたーのとこはこの音程でいいんだよね!?」

咄嗟に出たのは言いたかったこととは全然違う言葉だった
まあ、これを聞きたいとも思っていたけど。何で私は千早相手だと
こんなに緊張してしまうんだろう。千早が怖いとか、全然思っていないのに

「それでいいのよ。一緒にたくさん練習したじゃない」

もしかして呆れられただろうか、と思って俯いていたら
予想よりずっと優しい声で千早は言った。顔を上げると
ふわり、と柔らかい笑顔を顔に浮かべている

久しぶりに見たような気がした
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