短編

□騙し合い
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ねえ、知らなかったでしょ?あたしが天人だったなんて。そりゃそうよね天人って言ったってあたしは天人と人間のハーフだもの分かるわけないわ。もし、分かったとして天人嫌いの貴方ですもの私を殺すなり何なり出来たでしょうし、貴方なら涙を流しもせずに成し遂げてしまうでしょそれをしないって事は貴方は気づいていない…か私をほんとに愛しているか。まあ後者は貴方にはありえないことだと思うけれど、でももしかしたら…ううん変な考察はよしましょう。考えてもあなたの事なんてあたしに分かるわけないんですから。でもね高杉さん。あたしは貴方が嫌いじゃないのよ。だから、どうかどうか


「高杉さん」

「ああ?」

「愛していますよ」


俺はなんて馬鹿で浅はかだったんだ、所詮俺だってただの男。女に惚れることだってある。だけど、まさか、この俺が天人なんかに心を奪われるなんてな。俺は攘夷志士で、こいつは俺の敵だ。たとえハーフであろうと関係ない、天人である限り俺たちは殺してきたじゃないか。いままでだってこれからだって変わらない、と思ってたんだ。たまたま町を歩いてたら裏路地で天人にボロボロにされたこいつを見つけるまで。おなじ天人だけどこいつは違うなんて考えちまう時点で俺はもう駄目なんだろうな。ああなんで俺はこいつに出会っちまったんだよ。運命なんて俺は信じちゃいねえけどこいつに出会ったのがもし運命だったとしたら俺は


「俺も、愛してるぜ」


なんて無意味な騙し合い
(そんなこと分かってるけど、君と離れないためならば)




 

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