be truthful
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私はダイアナの部屋に行こうと、自分の部屋のドアへと振り向いた。
だがそこには見たことも無い男が黒のフードを深くかぶって立っていた。
私は咄嗟に身構えて男から飛びのく。
誰…?
白ひげ海賊団の船にそう易々ともぐりこめる人なんて、いないはず。
だけど実際に目の前には見たことの無い男の人が立っている。一体、どういう事なのか――――…
混乱に陥る私をよそ目に、目の前の男はフードから少しだけ見える口の口角をゆっくり持ち上げて笑って見せた。
「やっぱりアンタ、俺が見えるかい。」
男が軽い口調で話し出す。
私は男の言葉に強い疑問を抱いたが、今は構っていられない。
マルコさんを呼ばないと。
大声を出すために大きく息を吸い込み、口を開く。
そしてマルコさんの名を呼ぼうとしたとき、ドア付近に立っていたはずの男が私のすぐ目の前に立ち、大きな手で私の口を塞いだ。
「しー。アンタに騒がれるとこっちも色々面倒なんでね。」
口だけしか見えない男が、人差し指を立てる。
そして私がもう叫ばないということがわかると、大きな手を私から離した。
軽い足取りで私のベッドまで近づき、男がドサッと腰掛ける。
まるで自分の部屋かのように振舞う男に、私は嫌悪感を抱かずに入られなかった。
「…誰ですか、貴方。」
本当は今すぐにでも部屋を飛び出してマルコさんの下へ走りたかった。
だけど得体の知れない男の目の前に自分の背中をさらすことだけはしたくなかった。
それならばマルコさんか誰かが様子を見に来てくれるまで時間を稼げばいい。
私は男と正面から向かい合った。
すると男がまたニヤッと口をゆがめて笑う。
「度胸がある女は好きだ。」
「質問の答えになってません。」
「答えなきゃ駄目な理由でも?」
私は口を噤んだ。
飄々とつかめない態度の男に、私の中では恐怖よりも苛立ちが勝ちつつあった。
それに気がついたのか男が実に愉快そうに笑い出す。
ここまで気に障る笑い方があったとは、今まで私も知らなかった。
「そんな怒るなって。アンタには特別に教えてやるよ。」
「……。」
男はわざとらしいほどの沈黙の後に、信じられない言葉をサラリと言ってのけた。
「俺ァ死神だ。」