LIAR
□sudden
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それは木枯らしの中で震えながら待っていた名無しさんの肩を、俺が今まさに抱き寄せようとしていた時だった。
「…名無しさん?」
俺以外の誰かが呼んだ。
名無しさんは一瞬のうちに身体を緊張させると、声のした方に顔を向けた。
「…やっぱり名無しさんだ。こんなところで会えるなんてすごい偶然!」
「………マユミ…?」
「何年ぶりかな?…えーっと」
「…」
マユミという女性は笑顔で近づいてきて名無しさんに話しかけ始めた。
どちらかといえば少し幼い雰囲気を持った彼女は、名無しさんに会えたことを無邪気に喜んでいる。
「うーんと、二年ぶりくらい?」
可愛いらしく首を傾げたマユミは、俺を見てちらりと笑いかけた。