LIAR
□so long
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彼女は一瞬びっくりした顔で俺を見たけれど、すぐに「どうぞ」と隣の椅子をすすめてくれた。
「戻らないですか?」
俺はソファの方にちらりと目線をやって、名無しさんに尋ねた。
「私がいたら迷惑になりますから」
さらりと笑顔でそう言うと、カウンターの中へと入ってしまった。
「ユノさん、飲み物は?」
いくら説教されても、つい自分で動いてしまうんだな。
俺は苦笑しながら
「じゃあ、ミネラルウォーターをください」
その気遣いに甘えることにした。
「氷は入れますか?」
「はい」
「他には何か…」
俺はリョウの気持ちが少し分かったような気がした。
「もう大丈夫ですから。戻って来てください、名無しさんさん」
カウンターに少しだけ身を乗り出して、俺はとびきりのスマイルで言った。