envy…
□呪文
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同伴以外でこんな時間から待ち合わせをするのは何年ぶりだろうか。
私は約束のビルの前で立っている彼女に謝った。
「ごめんなさい…待たせちゃって」
「全然?私が早過ぎただけだし、待つのは慣れてるから」
彼女は目的のレストランバーを指して私を促した。
「また会えて嬉しいな」
エレベーターの中で彼女は微笑んだ。
「私も嬉しいです…」
前より少しだけ丁寧にメイクした彼女に言った。
「今日もいっぱい飲もうね、名無しさん」
「…ちゃんと食べながら、ですよね?」
私は口角を上げた。
「…友達だから、敬語もナシだよ?」
扉が開くと彼女は私の手を繋いだまま、出迎える従業員に会釈した。
「こんばんは」
「…ご案内致します」