envy…
□私らしい別れ
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「…重いし」
がさがさとうるさい紙袋を持って、私は店に出勤した。
「おはようございます、名無しさんさん」
「おはよう、エリ」
私は足元に荷物を下ろして息をついた。
騒がしい控室には忙しい蝶の話し声が飛び交っている。
香水と化粧品とお菓子の匂いが充満した部屋で、私はいつも通りに準備を始めた。
「名無しさんさん」
エリが私の隣に座った。
「なに?」
鏡でメイクの出来を念入りに確認する。
「私、寂しいです」
エリは子犬みたいな顔で言った。
「…私も寂しいよ、エリ」
向き直って後輩の前髪を撫で付けた。
蛍光灯の照明が揃った毛先をつるりと映す。
変わらない週末の夜
「名無しさんさん、お願いします!」
「すぐ行きます」
私は控室から足を踏み出した。