envy…

□素顔のNo.1
2ページ/10ページ

「ごめんね、散らかってて。これでも毎日片してるんだけどさ」


先輩はアニメのDVDを棚に仕舞いながら私に座るように勧める。

テーブルの下には破いた新聞紙の切れ端が落ちていた。

私はそれを拾って、くずかごに入れた。


「…女の子ですか?」


「そう、もうすぐ二歳。毎日うるさくって大変」


先輩は散らばった玩具を全てカゴへと投げこんで、テレビの横へ置いた。


「…後で叱らなきゃ」


「今は…いないんですか?」


「邪魔だから、二人で出掛けてもらった。名無しさん、今日は仕事なの?」


先輩は時計をちらりと見てから聞いた。


「…いえ」


「じゃあ、晩ご飯食べてってよ!ついでに泊まってもいいし」


弾む声でキッチンへ歩いて行く。
ばたん、と冷蔵庫が開く音がした。


「先輩、しっかり主婦ですね」


缶ビールを私と自分の前に置くと、電話で買い物を指示する彼女は笑った。


「…まあね」
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ