envy…
□素顔のNo.1
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都会の中心から、少し離れた住宅街。
整備された町並みには緑があちこち植えられている。
私は午後の静かな通りを歩いていた。
目標は、ダサい犬の置物。
…なるほどね。
その家の玄関前には無駄に陶器の犬が並んでいた。
私はひとり笑って角を曲がった。
「名無しさん!ここだよ」
数軒奥の家の前では私を待っていてくれたらしい人が笑顔で手を振っていた。
私は急いでそこへ走る。
「お久しぶりです」
「迷わなかった?」
「はい。…確かにダサいですね」
「でしょ!和風の家にダルメシアンの置物なんて、ダサ過ぎよねえ」
玄関の扉を開けて私を中へ入れてくれる。
家族の匂い
小さなスエードのブーツ
「会えて嬉しいです、先輩」
私は心からそう思っていた。