envy…
□プライドと涙
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私はものすごい早さでユチョンに抱き上げられていた。
「…こんなに冷えちゃって」
これは、違う。
「帰ろうね、名無しさん」
ひとりで帰らせて。
「俺がいるから大丈夫だよ」
いない方がどんなに良かったか。
私を座席に運び入れるユチョンの頭を守るように、運転手は出入口の頂上に腕を重ねていた。
「よろしいですか」
「ありがとうございます。お待たせしてすいませんでした」
「いえ、待つのも仕事ですから。お乗りください…寒いですから」
嫌味のない話し方
酔っ払いの相手をするという意味では彼らも夜のプロだ。
感情を押し殺し
たわごとも上手くあしらい
短い出会いを繰り返す
私は清潔に保たれた車内でゆっくりと目を閉じた。