envy…
□敵わない女
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彼女はタクシーの運転席の窓をノックした。
「メーター、倒しててくださいね」
「…いつもお世話になってますから。大丈夫ですよ」
運転手はよく通る渋い声で言うと、軽く会釈した。
顔見知りを使うのも、彼の秘密を守る為
口が堅いタクシーは彼女らしい知恵
隠すよりも
ギブアンドテイク
みんながメリットを得ればいい
「問題があるなら、きちんと話した方が…」
後からトラブルが起きそうな相手だったら困るものね。
「問題なんかありません。もう終わった話ですし、二度と彼とも会いません」
彼女は私の目をじっと見つめている。
「もう迷惑をかけることは絶対ありませんから。…信じてください」
ダサい誓い
我ながら、惨めな女だと思った。