envy…
□観察の理由
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「災難だったなあ」
ブルームで飲むようになったのは、その俳優が「お詫び」に紹介してくれたのが始まりだった。
騒ぎが収まるまでの
隠れみの
実際の浮気相手は私じゃなかったから。
「別に。こんなもんでしょ」
黙っていれば、それで済む。
俳優は店には来なくなったけれど、今でも彼の紹介で客が来たりする。
私は秘密を守っていればいい。
「…シャンパン持って来てよ?しばらく支払いはアイツなんだから」
「素直じゃねえなあ…ま、いいけど」
それからリョウは私のカウンター席を必ず空けてくれるようになった。
パパラッチが退いて、俳優の支払いを断ってからも私はブルームで飲む習慣を変えなかった。
「いつか名無しさんを俺の大事な奴に会わせたいよ」
リョウがぽつりと言った。