envy…

□観察の理由
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リョウが私を簡単にVIPルームに入れたのは多分そういうことだ。

芸能人を見たのは初めてな訳じゃない。

若い俳優やタレントだって店には遊びにやって来るから。

それを知りたがる輩も後を絶つことなくやって来ては噂話を拾っていく。

指名が欲しかったり、口の軽いキャストはそれである程度の収入をキープしているかもしれない。


「名無しさんさんの指名客じゃないですか?」

その頃世間で注目されていた俳優の浮気報道が流れて、一時パパラッチみたいな奴に指名される日が続いたことがあった。


「名無しさんから誘ったの?」


「噂になったらトクじゃん?」


「…ぶっちゃけ幾らで喋るの?」


店長は喜んでいたけれど、私には地獄の日々だった。


「そんな人、知りません」


あの時、初めてリョウが話かけてきたんだった。
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