envy…
□その正体
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「痛かったでしょ?…あー、血が出てる」
彼は私の靴を脱がせて、生々しい傷口を見つめている。
新品のハイヒールを履いた日には必ずこうなる。
まだ硬いカカトの部分に足首がこすれて、皮膚に熱い痛みをつける。
防ぎようのない儀式には時間をかけて慣れるしかなくて、いつもは仕事が終わったらすぐに靴をはきかえる。
「ちょっと待っててね」
彼はそう言うと、ふらりと部屋から出て行った。
「脅かさないでよね…」
私はカウンターの背の高いスツールで靴を脱いだまま、足をぶらぶらさせた。
傷口に空気が当たって気持ちがいい。
窮屈なヒールから自由になれた足は、熱さを忘れたみたいに軽くなった。
「名無しさん、靴擦れしてんだって?」