LIAR
□heart
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名無しさんの勧めてくれたオリーブ色のソファだけが、唯一優しいアイテムに思えた。
「…マユミさん、に会ったよ」
「…そう」
名無しさんはキッチンに入ってお湯を沸かし始めた。食器を取り出す音が静かな部屋に良く響く。
「少し、話したよ」
「…そう」
俺を見ようともしない名無しさんは、黙ってお湯が沸くのを待っている。
「俺、名無しさんに何か失礼なことをしたのかな?」
「………」
「いきなり『名無しさんはもう俺とは会いたくない』なんて聞かされて…正直驚いてるんだ」
「………」
「ねえ、名無しさん?」
コーヒーのいい香りが鼻先に届いてきて、つい一瞬うっとりしてしまう。
「…マユミから聞いた通りだから」