LIAR
□first contact
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店に入ると、いきなり音楽が足元で地響きのような振動を始めた。
耳に心地良いダンスナンバー
タバコと香水の入り混じった匂い
明るめのバーコーナーを素通りして、彼女はどんどん奥へと進んでいく。
突き当たりの螺旋階段を下りながら階下を眺めると、暗い照明の中にDJブースが見えた。
徐々に熱を帯びていく様子のフロアには、それぞれのグルーヴを楽しむ客で溢れている。
誰も俺に気づいてはいない。
人の群れを避けながら細い通路を行くと、大きな扉の前で彼女が立ち止まった。
振り返って俺の存在を確かめると、その扉をぐい、と手前に引いて微笑んだ。
「…どうぞ」
彼女の手が、そう言っている。