shortnovel

□非日常的な日常
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(新←←臨/シリアス)
・臨也可哀想
――――――――――







シズちゃんと喧嘩して
新羅の家に行く

それはもう俺にとって日常になっていた

遊びに行っている訳じゃ無い、
治療してもらいに行く


一昨々日も、
一昨日も、
昨日も、

そして今日も…、

少し足を引きずり
血の滲む腕を押さえ

見慣れたドアのインターホンを鳴らす





「はーい…って臨也か」

「何か酷くない?」

「はいはい、今日はまたこっぴどくやられたね」

「シズちゃんったら手加減無いんだもーん」

「静雄が手加減出来ないのも分かる気がするよ」

「何か言った?」

「何も、まぁ入りなよ」

「おっじゃましまーす」





家に入ると廊下を歩き
リビングのドアを開けソファなり食卓机の椅子なりに座る

そして新羅は俺と向き合うようにして座る

こもまた日常




「どれ?怪我見せて」

「ん」


まず腕を見せた
新羅は「うーん」と唸りながら

物凄く至近距離で腕を診る


それだけでドキドキしてしまう俺は
相当重症だろう


「こっちは軽そうだね少し血が出てるだけだよ」

と言って消毒液の付いたガーゼをあてがう


「いっ…もっと優しくしてよ」

「そんな事言うなら診ないよ、
ていうか静雄に構うのやめなよ

そうしたらセルティと僕の愛の巣を荒らされずにすむんだからさ」

「そんな事言ったってさぁ面白い事はやめられないよ」

「君もつくづく馬鹿な奴だ」

「ほめ言葉どーも」


「はいはい、次足出して〜」




不意に外からバイクの音がした気がした


「あっ、セルティ帰ってきた!」

新羅は
まるでプレゼントを持った親の帰りを待っていたかのように

玄関へと走っていった



『静雄に構うのやめなよ』

一人になりさっきの言葉が脳裏に浮かぶ



シズちゃんに構うのやめちゃったら
此処に来る理由無くなるじゃん

怪我しないと新羅俺のこと見てくれないじゃん




「今日の仕事はどうだった?」
「そっかぁ〜」
「ハハハッそんな事よりセルティ実は僕さぁ」
「ちょ、冗談だよ冗談!!」
「セルティ拗ねないで〜」

暫くして玄関から出て来た二人

運び屋の持つPDAの画面が見えないので
自然と新羅が一人で話している事になる

患者(俺)を蔑ろにして


それを見ているのが辛くなってきて

さっきまで一緒に話していたのに
もう俺のことを忘れられている様だった


帰ろう、そう思った
足の方は大丈夫だろう

それよりも何倍も心の方が痛かった

このまま此処にいたら泣いてしまいそうで


「新羅もう帰るよ」

「え、大丈夫なのかい?」

「うん…じゃあね」

「気を付けてね」



背で新羅の声を聞き家を出た







いつも、いつでも
セルティセルティセルティ……

運び屋、俺はお前が羨ましいよ
いつでも新羅の一番じゃないか

俺にも少しほんの少し分けてくれよ


新羅もさ
一番じゃ無くて良いからさ少しくらい





俺のことも見てよ、





fin.

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