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□Empresses.
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二人が一室に入り浸ってから丸一日。その間に諸葛亮を始めとした皆の頑張りで、劉備は大分体調を回復させていた。
「全く…一時はどうなるかと思いました」
「そうだぜ、義兄者!俺らに素手で勝てるとまで言ってたんだぜ?」
「俺がそんなことを…?熱のせいとは言え、馬鹿なことを言ったものだな」
劉備を始めとして、将達は皆明るく語り合い、笑った。正に平和な一時。しかしそれは、あまりにも唐突に終わりを告げる。
「劉ちゃーん!」
「殿ーっ!」
勢い良く扉が開いたかと思うと、甘と趙雲が劉備の元に走り寄って来た。
「やっと出来たのぉ♪はい、劉ちゃん♪」
甘が差し出した鍋には、緑とも青とも黒ともつかない、謎のドロドロした液体が。見た目のえげつなさもさることながら、更に破滅的な臭いまで漂わせている。
「か…甘?これは…一体何という名のアートなんだ?」
「もぉ、違うわよぉ〜。これは劉ちゃんの風邪を治すお薬!はい、劉ちゃん、あーん♪」
可愛らしい笑みを浮かべ、鍋の中の薬を劉備に差し出す甘。…しかもスプーンとかでなくお玉で。
「ち…趙雲!!」
近付いて来るお玉を恐怖に満ちた顔で見ながら、劉備がいきなり叫んだ。
「はい、殿!」
「…まずお前が飲むんだ」
その言葉に、皆唖然とした。しかし劉備は構わず続ける。
「俺は猫舌なんだ…だから先に飲んで、熱さを確かめてくれないか?」
−熱さを確かめるのに、飲む必要などまるで無い。
しかしどこまでも従順な趙雲、劉備に頼られたことが嬉しくて、
「解りました!」
と答えてしまった。
「では行きます!」
趙雲は甘からお玉を受け取り、口に含もうとした。しかし次の瞬間、
「遠慮せずに、溺れる勢いで飲んで来るんだ!!」
そう叫ぶと、劉備は趙雲の頭を掴んで鍋に沈めた!!
「がふっ!!」
あまりにも突然の事態に、場はしーんと静まり返った。趙雲はと言えば、鍋に顔を突っ込んだまま微動だにしない。
「子龍君、そんなに飲みたかったのぉ?」
呑気に尋ねる甘。それに答える様に、趙雲の顔がゆっくりと上がった。
「だ…大丈夫です、殿…全然、熱く、ありませ……うっ!!」
趙雲はそのまま床に崩れて行った…。
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