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□おじいちゃまは心配性
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「…とぉはくぅぅぅ…」
董卓は何度目か解らない孫の名を呟いていた。
「お前が帰って来てくれるのなら金など…いや、都市の一つや二つ、州の一つも惜しくはないわ…」
「本当?お爺様?」
「勿論だ、董白……董白…?」
「わぁ、嬉しい!お爺様ー!!」
そう言ってはしゃいだ少女ー董白は、うずくまる董卓に抱き着いた。
「と、董白!!!無事であったのか!!」
「…申し訳ございません、董卓様」
驚く董卓の前に跪き、そう言ったのは張遼だった。
「董白様がどうしてもとおっしゃられたもので…」
「張遼?何…一体どういうことだ?」
「張遼を叱っちゃ駄目よ、お爺様。全部私が頼んだの」
「ど、どういう意味だ!?儂に解る様に説明しろ!」
明らかに混乱状態の董卓。因みに呂布と呂姫は、今だに李儒の来々軒講習を受けさせられている。
「私がね、張遼に頼んで誘拐して貰ったの…お爺様、最近遊んでくれなかったから…」
「そ…そうだったのか!済まぬ、董白!儂が悪かったぞ!!」
そう言い、董卓はしっかりと董白を抱きしめた。側では張遼が貰い泣きをしている。
「ねぇ、お爺様?さっき言っていたことは本当?」
董白が無邪気に尋ねた。
「さっき言っていたこと?」
「そう。私の為なら州一つも惜しくないって!だったら私に司隷州をちょうだい!!」
「良いだろう。今から司隷はお前の物だ」
「後ね、洛陽に大きなお城が欲しいわ!」
「よしよし…すぐに手配してやるからな」
そう言って董白を撫でる董卓の顔は、正に優しいお爺様だった。

こうして董白誘拐事件は幕を閉じた。そしてすぐに洛陽に人が集められ、壮大な城造りが始められた。董卓の董白に対する思いが、如実に伝わって来る。
因みにこの一件で、董卓と李儒の手にかかった者は二十九人であった。多いのか少ないのか、何とも中途半端な数である。
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