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□おじいちゃまは心配性
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誰もが口を開くことなく、部屋はしんと静まり返っていた。ただ聞こえるのは、董卓が何事かを呟く声だけだ。そんな部屋に、突然電話の音がけたたましく鳴り響いた。
「とぉおおはぁあくぅううっ!!!」
さっきまで部屋の隅で膝を抱えていた董卓が、眼の色を変えて電話に飛び付いた。しかし李儒が素早く電話を退けたせいで、董卓は机に強かに額をぶつけた。
「董卓様、そんなに急いでは電話が壊れてしまいます」
李儒が涼しい顔をして言う。
「と、董卓様!お怪我は…っ!!」
「おぉおんのれぇえぁっ!!」
「うぎゃあーーっ!!!」
慌てて駆け寄って行った近侍が、断末魔と共に床に沈む。董卓の額からは血が流れていて、その形相と相俟って鬼の様であった。
「董卓様、電話を奪ったのは李儒です…其奴でなく」
半ば呆れ顔で言う呂姫。すると董卓の視線が李儒に、李儒の視線が呂姫に注がれる。周囲の普通の人間達は顔に恐怖を張り付かせているが、呂姫は平然と李儒を睨み返した。流石は呂布の娘…という所か。
「あ…あの、董卓様……」
場の空気に遠慮する様な声で、近侍が言った。
「黙れ。儂は今忙しい」
「で、ですが…その……お電話、切れてしまいましたが」
董卓が固まった。
「…呂姫、少し下がった方が良いな」
「そうですね」
小さな声で言葉を交わし、二人はゆっくりと董卓と反対側の壁の方へ寄る。
「おのれらぁ…斯くまで儂の邪魔をしおるかぁ…っ!!」
そう言った董卓の背後から、凶々しいオーラが立ち昇る。
「邪魔者は……消え去れぇえっ!!」
叫ぶと同時に、部屋中にオーラが拡散して行く。近侍達は大絶叫と共に、次々に崩れて行った。最終的に部屋に残ったのは、董卓、李儒、呂布、呂姫のみだった。
「…父様」
「…何だ」
「…片付けましょうか…」
「…そうだな」
返り血を拭い、呂布と呂姫の二人は近侍の死体の片付けに専念することにした。
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