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□おじいちゃまは心配性
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本部室内にもやはり重い空気が満ちていた。ついでに必要なのかよく解らない電子機器も、多数設置されている。
「董卓様、これなるは警察署長とその娘です」
李儒がそう言って指さした先には、眼光鋭い男女が立っていた。
「ほう、警察署長…って、奉先と呂姫ではないか!たわけがぁっ!」
「げふぁあっ」
董卓の傍らにいた近侍二人が、断末魔を上げて倒れた。

前言撤回。
李儒の後ろに控えていた男もまた、断末魔と共に倒れた。無論、李儒が攻撃を避けたせいである。
「董卓様、危ないではありませんか…」
(こっちの台詞だ、馬鹿野郎…っ!)
しれっと言った李儒に、場の者達は一斉に血走った眼を向ける。しかし董卓だけは、
「む…済まぬ」
と、何故か反省。
「…董卓様も李儒様の暗殺計は怖いんだな」
「うわ…っ馬鹿…っ!」
電子機器の調整をしていた男が思わず呟いてしまった。隣にいた男が口を押さえるがもう遅い。董卓も李儒も、それを見逃す訳が無かった。
「…李儒」
「クフォフォ……解っております」
李儒の背後から禍々しいオーラが立ち上る。それが意思を持つかの様に、二人に襲い掛かって行った。
「うぐぅ…っ」
一人はすぐ動かなくなったが、もう一人はまだ何とか生きていた。息も絶え絶えに男は尋ねる。
「り…李儒様…解毒は…どう、すれ…ば…?」
「説明書きによれば…自城に戻れば消えるぞ」
「…ここが、自城なんですが…」
「では仕方無い。そのまま消えろ」
「そ…そんな…ぐはっ!」
こうしてもう一人も動かなくなった。
「李儒…“説明書き”って何のことだい?」
終始無言だった呂姫が尋ねる。
「カード裏にある、説明のことですが?」
「そうかい」
呂姫との問答を終わらせ、李儒は忙しく指示を出し始めた。それを眺めながら、呂布が初めて口を開いた。
「呂姫」
「何です、父様?」
「“カード裏”にはツッコまなくて良かったのか?」
呂布は案外、ちゃんと話の流れを聞いていた。
「良いんです。面倒ですから」
「…そうか」
二人はまた黙って状況を見守る。董卓はとうとう部屋の隅にうずくまってしまった。
「…呂姫」
呂布が再び口を開く。
「何です、父様?」
「俺達は…ここにいる意味あるのか?」
「ありませんね」
「…そうか」
二人は暫く様子見に徹した。
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