懸想の三蔵
□雪の中の奮迅
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それは、幼い御曹司の一言が始まり。
「お母さん!」
「どうしたの?リクオ。」
「お父さんみたいになりたい!! だからね、武道をやるの!!」
「……はっ?」
思わず、洗濯物を取り落としてしまった。
「り、リクオ?」
「僕ね、お父さんみたいにかっこよく刀を振り回せるようになりたいな。」
「でもね、あれはお父さんだから出来るんであって、まだリクオには、」
「だって、早く僕もお母さんを守れるような強い人になりたいんだ。」
あまりに必死に迫るリクオに、若菜はつい胸を打たれてしまう。
まだ四つになって間もないこの子が、こんなことを言うなんて。
きっと、他の誰にも言えなかったのだろう。
父親や組の誰かに相談すれば、きっと止められるから。
こうなれば、若菜に拒む気など微塵もなかった。
「そう。それじゃあ、お母さんと一緒に頑張りましょう。」
「……え?」
きょとんと首を傾げた我が子を撫でて、若菜は微笑んだ。