BOOK/SS

□行かないで
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再び俺は目覚めた。

そこはさっきの真っ暗な世界じゃない。

さっきのアイツの声も聞こえない。

目の前に居たのは―――


「ほら。学(ガク)!早く起きて学校行きなさい!!」

「・・・母さん。」

「なに??朝ごはんならできてるわよ。」

「・・・なんでもない」

俺は静かに微笑んで見せた。

「・・・ほら、遅れるわよ。」

母さんも同じように微笑んだ。

俺は急いで身支度を整えて家をでた。



さっき見たのは夢だったのか。

すごく苦しい夢だった気がする。

でもほとんど思い出せなかった。




「学!おっせえなあ。俺よりも寝坊なんて笑えるぜぇ???」

「それ自分で言うのかよ・・・寝(シン)。」

「当たり前だろー俺はよく寝るからこんなにでかいんだ。」

そう2mあろうかという身長を自慢するコイツはシン。いっつも遅刻ギリギリだ。
理由はただ1つ。寝すぎ。

いっつもだらだらしてて落ち着かない俺とは正反対。

でもそんな俺たちでも今は切手も切れぬ大親友だ。


「なあ、マジで寝坊か??」

「あぁ・・・まぁな。変な夢見ちまってさ。たしか・・・真っ暗でなんか聞こえて苦しい夢みたいな??」




「・・・どうかしたか寝。」

聞こえない返事を気にして前を向くと
目を見開いた寝がこっちをみていた。

「・・・どうしたんだ??なんか変だぞお前。」

いっつも半開きな目しかしない寝にしては珍しい。初めて見た位だ。

「・・・え?あ、あぁ。今目ぇ開いて寝てたわ・・・ははっ」

「何だよお前ーっ結局寝てんじゃん!!」

「っはははー。マジで寝みぃもんよー!お前ら良く起きてられんなあ!!」





笑顔で答えてはいたけど、それから今日の寝はずっとどこか変だった――――。






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