命遊び

□天ぷら
1ページ/1ページ

「お前は俺の体に何をした」

ヴェイグは俺に聞こえるように呟いた。
俺は大根を擦っていた手を止めた。
何って、その、ナニのことだろう。

リビングで固めのソファに座るヴェイグに、振り向いて何の事だよ?と惚けることも出来たが、いつもより淡白な声に俺は冗談で済む事でないと理解した為、素直に頭を下げた。

「す、すまん!!」
「俺は怒っている訳ではない。
何をしたか聞いているんだ。」

俺は頭を上げた。ヴェイグはソファから動かずに剣の手入れをしている。こちらを見向きもしない。

「えっと…分かるだろ?」
「分からないから聞いているんだ」

嘘だ絶対。ヴェイグは時々、俺にいじわるする。その時は決まって剣を磨く手が遅い。

「ヴェイグ、」
「痛む」

その一言で俺はヴェイグがいつもより大股で椅子に座っている理由が分かった。
俺は慌てる。ナニにつける薬とかあったっけ?
あたふたしているとヴェイグは無言で立ち上がり、俺の隣に並ぶ。そして大根を持ち、ガシガシと力強く下ろし始めた。

いつもの俺なら、そんなに力強く擦ったら荒くなる!と声を上げて直ぐ様止めるが、俺はただ黙ってその様子を見ていた。
何が言いたいかよく分かる。
だから天ぷらが食べたいと言ってきたのか。
俺は大根おろしは絶対につける派ということをヴェイグは知っている。

俺はザリザリになった大根おろしを見た。
荒い。これでは美味しくない。

「…食べるか」

ヴェイグは既に出来上がった天ぷらとザリザリの大根おろしをリビングへ運ぶ。俺は天つゆを器によそった。手が震える。








「オナニーしました!申し訳ありません!」

俺は土下座した。
ヴェイグは天ぷらを食べている。サクサクと衣を噛み砕く音にゴリッガリッと荒い大根おろしをかじる音が混ざる。その音がヴェイグの心境を語っていた。
俺の手料理を少し手を加えて台無しにする。
ヴェイグの無言の仕返しだ。

「その、ですね。他人の体だとどうかと気になってしまいまして…」
「お前とクレアが入れ代わらなくて良かった」
「クレアには、てか女の人にはしない!流石に!」

昨日。俺とヴェイグは体が入れ代わった。
理由は言いたくない。吐き気がする。
時間が経つと戻ると言われ、半信半疑だったが本日無事に戻った。
これだけなら不思議な体験したね、で終わるのだが俺は他人の体がどうなっているか気になってしまった。そしてあろうことか親友の体でオナニーした。普通に気持ち良かったが、俺のやり方は間違っていたらしい。
黙っていればばれないと思ったけど、バレた。恥ずかしさで死にそう。

「俺は、他人と入れ代わる事がどれだけ大変か、不安か。昨日の1日で分かった。クレアがどれだけ苦労したか、どれだけ強い心を持っているか再確認した。その時何も出来なかった自分の不甲斐なさを嘆いた。それなのに、お前は」

ヴェイグは冷たい視線を俺に向ける。
一言一言に重みがあって、痛い。

「オナニーしていたのか。」
「申し訳ありません!!」

ヴェイグはハァッとため息つく。

「お前のその無神経なところ。呆れを通り越して感心する程だ。」
「お、俺だって不安だったところもあるぞ!!」
「何が」
「…と、料理が、美味い飯が作れなくなるかも、とか」

ヴェイグはフッと笑った。どうにか許して貰えたようだ。俺はヴェイグに向かい合うようにして座り、天ぷらを食べ始めた。



しかし、俺の考えは甘かった。ヴェイグはまだ俺の事を許していなかった。

「ティトレイ。俺にも触らせろ」
「は?え、うわっ」

食後の片付けが終わるや否や、ヴェイグは後ろから俺に飛び付き、壁に押し当てる。その乱暴な扱いから、俺はヴェイグの怒りが大きいことに気づいた。

「ごめん、ほんっとにごめん!いて、いててててっ!」

ヴェイグは乱暴に局部を鷲掴む。手加減しているだろうけど痛い。

「ティトレイ。お前はどんなやり方をしたら、こんな痛みを残すんだ。Mなのか」
「Mじゃねぇ!!いたい!!」

しばらくしてヴェイグは力を弱めた。優しく揉まれる。

「ヴェイグ、悪かったって。気持ち悪いだろ。男同士で。離れてくれよ。」
「別に平気だ。」
「平気ってホモかお前は」
「ああ」
「は!?あ、え!?」

親友のまさかのカミングアウトに思考が停止する。ヒューマガジュマの壁なんてなければ男女の壁もない。ここでヴェイグから離れたら、俺の旅の何かを否定しそうで俺はヴェイグにされるがままになっていた。

俺もしたんだから、させてやろうと、色々突っ込みたいことを飲み込んでヴェイグに弄られること数十分。
射精した。

「ヴェイグ、お前」
「なんだ」
「俺の体、触ったろ」

こいつ、クレアがどうのこうの言いやがって。最低だ。俺の体、調べやがった。
 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ


©フォレストページ