命遊び

□無頓着なあいつ
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「ティトレイ」

その声に俺は戸惑った。
そいつは人を嘲笑って貶して、虐めることが大好きな奴だ。平気で菊の花を人の家の前に置く奴だ。
それなのに、今そいつは俺にすがりついている。泣きそうな声で、消えそうな声で。

俺はそいつの頭を撫でようとして腕がないことを思い出す。そいつ、サレに切られた。

「な、なんだよ。」

俺はとりあえず声をかける。こいつがこんなに取り乱すなんて、珍しい。そして気持ち悪い。



地下牢に半月も閉じ込められ、その上右腕を切られて、おかしくなりそうなのはこっちなのに。いつもの冷酷な微笑はどこへいったのか、俺に抱き付き離れない。

俺は仰向けに寝転んだ状態で天井を見つめる。三日前から気になる染みがある。人の顔に見えるんだ。左腕は床に釘で直接打ち込まれている為動かせない。酷いことしやがる。
俺は視線を俺の上に乗っているそいつに向けた。

「どうしたんだよ」

先程の問いかけに反応が無かったのでもう一度声をかけたが、当然のごとく無視される。こいつは一度だって俺の言うことを聞いたことがない。
サレはゆっくりと体を動かし、俺の下半身に局部を押し付ける。ああもう、オナニー始めやがった。本当に何がしたいんだ。訳がわからん。

ズボンも脱がずにそのまま擦り付けてくる。刺激が弱かったのか結構強めに。時々俺の局部にも当たって痛い。
気持ち良さそうな顔が無償に腹が立つ。
サレがふと俺に視線を合わせて口を開いた。

「ティトレイ、夢を見たんだ。君が居なくなるんだ。」

咄嗟にフリだと思った。このあと俺はこいつに殺される。俺は少しだけ顔をしかめた。
死にたくない。

「僕の前からいなくなるなら、いっそのこと僕が殺してしまえばいいと思うんだ。でも出来ない。」

気持ち良さそうな顔から一瞬暗い顔になるがまた戻る。そしてオナニーは続ける。

「だって僕は、君を虐めるのが好きなんだ。嫌がるのが好きなんだ。死んでしまったらそれが出来ない。怖い。」

お前のその考えが怖い。最低、残酷、そんな言葉はこいつを喜ばせるだけだ。だから俺は決まってこの言葉を投げ掛ける。

「俺はお前のことなんとも思ってないから」

「酷い、ティトレイ」

サレの顔が一気に崩れる。それでもオナニーは続ける。

「僕の気持ちに気付いていてそれはない。なに?仕返し?僕が君に酷いことしてるから?君も僕に酷いことするの?理不尽だ。
僕は何でも出来て、地位もあって、欲しいものは何でも手に入る。生まれつき人を踏んで生きる存在だ。君は踏まれる側だろう?
それなのに、踏んでどうする。訳がわからない。」

訳が分からないのはこっちの方だ。サレの言いたいことがさっぱり理解出来ない。
俺は聞き取るのを止めて天井を見上げた。
気になる染みはどこら辺にあったっけ。

「ティトレイ、僕は誰でもいい訳ではないんだ。君だけなんだ」

「ああ、そう。俺はなかな頑丈だからな」

サレは黙った。でもオナニーは続ける。
俺は気になる染みを見つけた。やっぱり顔に見える。








その光景を遠くから観察していた私は、初めてサレを哀れんだ。

サレは私を可哀想な存在だとバカにしている。でもそれは私がハーフだからではなくて、彼は誰でも下に見る存在だったからだ。
ある意味、やつはこの世界で平等だ。
そんな奴は始めて人を愛した。もちろんまともな愛し方など分からずに当の惚れられた本人は酷い扱いを受けている。

面白いのはその本人が全くもってサレの思いに気付かないことだ。あんな分りやすいアプローチなのに、気付かない。見ていてとても滑稽だったのだが、あまりにも鈍すぎてサレがおかしくなった。
監禁して愛を囁いてセックスして、それでも相手は気付かない。相手にされない。それがどれだけ苦痛か、ハーフだからと跳ね除けられていた私には分かる。同情しないが。

私はため息を一つついてサレに近づいていった。もう見ていられない。圧倒的な恐怖で周りを支配していたお前がなんたる様だ。

私は後ろからサレをつかみその男から引き剥がした。サレは射精していた。
 

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