命遊び
□焼きサンド
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自分は我ながら単純なやつだと思う。
いい食材が安く手に入るよ、と言われホイホイ見知らぬ男に付いていって、薬で眠らされて拉致監禁。もちろん、その男は変装したサレで。
まんまとヴェイグを誘き寄せる餌となったわけだ。
「くそーなんて間抜けなんだ俺は」
「正直、上手く事が運び過ぎて引いてる」
サレは椅子に座り焼きサンドを食べていた。ジャムは?と聞いたらそんな単品ばっか食べてたら病気になると正論を言われた。その通りです。すいません。
俺はベッドの上に両手足縛られて放置されている。
こっそり樹のフォルスで脱出を試みるが、サレのフォルスに邪魔をされる。その邪魔の仕方が前髪だけを集中的にはためかせるというもので、ウザさは最上級だ。
「さっきヴェイグにティトレイを人質にした旨を伝えたら、バイラスが大量発生してそれどころじゃないって半ギレで返されたんだけど。あいつ怒るとあんなに怖かったっけ」
町中が騒がしいのはその所為か。
あと俺は悲しいぞヴェイグ。
それどころって何だよ一大事だろ。仲間のピンチだろ!
脳内で「バカヤロー!罠だって知りながら何で来やがった!」って感じの台詞シュミレーションしてたのに。
「バイラス片付けるまでセックスしない?」
「はっ?えっ?」
言葉の意味が飲み込めない俺を余所に、サレはカチャカチャとベルトを外している。
こいつの頭の中どうなってるの?
何でこの状況で欲情するの?暇潰しのノリで人質前にしてセックスするのって、貴族の間での流行りか?
娼婦でも連れてくるのだろうかと思ったが、サレはそのまま上着を脱ぎ、俺の上に乗っかってくる。
え?3P?でも何かが抜けてるぞ?女の人がいないぞ?まさかこのまま二人でとか?
あの、俺、男だけど?お前も男だよね?
サレはそんな疑問も当たり前だろと答えるように俺にキスをしてきた。
しばし何が起きてるか、分からず呆然とされるがままにしていたが、上着の中に手を入れられて我にかえった。
「サレ!!!おかしいだろっ!!!」
「だろうね」
「だろうねって!」
喚く俺を軽くかわし、胸板をなぞられる。
気持ち悪ぃって騒ごうとしたら、サレの巧妙な手つきに不覚にもンッと甘い声を漏らしてしまった。死にたい。もちろんサレがその痴態を見逃す筈がない。
「おかしいって言う割りにはちゃんと感じるんだね。」
楽しそうに俺の体をまさぐる。うるせぇ!としか反論出来ないので、俺は口を閉じることにした。サレと口喧嘩しても勝ち目はないし、勝てたとしてもサレよりも性悪の称号を手に入れてしまう。それは嫌だ。
サレは俺が黙ったままなのを満足そうに見つめると、体から手を離し俺のズボンをつかんだ。スルスルとなれた手つきで下着ごと下ろされる。
両足を肩に乗せられ、固いものが尻に当たった。
まて、早くないか。愛撫が雑すぎないか?
性経験のない俺でも分かる。慣らさないと痛い。ましてや尻の穴なんて。入れるのではなく出すところだろう。
ここで騒ぐとサレが調子に乗ることは分かったので俺は硬く口をつぐんだ。
サレがグッと俺の腰を掴み、そして
メリメリッ
実際には音はしないが、確実に何かが押し広げられる音が脳内に響いた。
肛門に激痛が走る。
サレのバカ野郎。このホモ野郎。俺のファーストキス返せ!!!!
絶対に切れてるだろう。しかしサレはそんなのお構い無しに腰を動かす。
皮膚と皮膚が引き裂かれるような痛みに俺はサレの肩に乗せられた両足をバタつかせた。
「サレッ!!もっと、ゆっくりっ!!!」
止めてくれと言っても止めないのは分かっているので、出て来るのは譲歩の言葉。
「いや」
満面の笑みでサレは俺を見下ろす。
こいつ本当に最低な奴だ。幾度となく冷酷な奴だとは思っていたが、ここでまた思い知らされた。
無言で睨み付ける俺をやはり楽しそうに見つめてくる。おもむろに俺の顔へ手を伸ばし、頬を撫でる。
「君、よく見ると可愛い顔してるね」
なに言ってんだこいつ。
正気の沙汰じゃねぇなと思ってサレの瞳を見たら虚ろだったので、本当に正気じゃなかった。いつも死んだ魚のようなよどんだ瞳をしているから気付かなかった。こいつラリってやがる。
いきなりセックスしようと言い出した理由は分かったけれど、現状どうにもならない。
しかも正気じゃないくせにサドっぷりは健在だ。最悪だ。悲しいことに、俺では四星一人であっても敵わない。
愛してるよとか言われたら気色悪くて気絶しそうだと思ってたら、君の瞳を見ていると僕の心が疼いて止まらない、と自作ポエムを語りだした。無論、突っ込んだままで。
想像の斜め上をいく展開に、俺ははぁ、どうも…と別段嬉しくもない親切をされた時のような返事をしていて、それを何故か肯定と受け止めたサレを、ぶん殴りたい。