小説
□『亜熱帯気分上昇』(気付きそうで気付かない、僕らの気持ち)
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「…持ってやるよ」
チャリにチェーンを巻き、不器用にも括り付けられたソレをモタモタと運ぼうとする三橋にヒヤヒヤする。
(誤って脚の上にでも落としかねねぇ)
オレはそう言ってスイカを抱えると、三橋はまたビクッとして後から着いてきた。
オレはチッと舌打ちする。
コイツのオレに対するキョドリはいつになったら直るのか。
(信頼は…されていると思う。信用も)
何度となく聞かれたし、何度となく答えた。
『阿部 君が いなく、ちゃ、オレ は ダメピーのまま なんだ…!』
(素直に)
…嬉しい、と思う。感動もした。コイツはオレに頼ってる。オレがいなくちゃダメなんだ。
なのに━…
「おっはよー三橋!」
「…! 田島、くん…っ」
明らかにホッとして、ぴゃっと髪を逆立てて。
(…何で嬉しそうなんだよ)
頬を染めて、
おは、おはっ、おはよぉ…っ、なんて言ってる。
オレはそんな三橋の態度を見てまたムカムカっとする。
バンバンッと三橋の背中を叩く田島(そんなにすんな!壊れちまうだろーがっっ)
「三橋ーぃ、今日も可愛いのな!練習頑張ろーぜぃ!」
悪びれずそのまま三橋の肩を抱いて、オレに気付いてクルッとこっちを向いてニカッと笑う。
「っはよ!阿部!!今日も不機嫌なのな」
「…おーよ」
天然の二人を並び見て、オレは口元がヒクッとひくついた。